雨の音、君の音

降り注ぐ水の音で目が覚める。

カーテンを少し開け外の様子を伺ってみると、
どんよりととした空からは雨が降っていて、窓辺の桜の木の色を一段濃くしていた。

次に枕元にある時計を見ると、起きるにはまだ早い6時20分。
そのまま二度寝してしまってもよかった。

相方はどうだろう、と思い目線を向かいのベッドへ移す。
彼はまだまだ夢の中のようで、毛布から出ている肩は規則的に上下している。

私はそっと自分のベッドから抜け出し、忍び足でレンのベッドに近寄る。
すやすやと心地よさそうに寝ているレンの顔を見ると、
思わず自分の顔がほころぶのがわかった。

普段は結んでいるその髪を優しくかき上げると、さらさらと音をたてるように指の間からこぼれいった。
それが楽しくって何度も、すくっては落とす動作をくり返す。

「な、に・・・?」

やりすぎてしまったのだろう。
レンがゆっくりと目を開き、寝ぼけ眼で聞いてきた。
その声がかすれていて、ちょっとセクシーだなぁ、なんて思ってしまう。

「雨で目覚めちゃった」

起こしてごめんね、とかわいらしく付けたしながら答える。

「ん・・・今、何時?」
「6時半くらい」
「じゃ、まだ眠れるね・・・」

そう言ったレンはベッドを半分あけ、毛布を持ち上げる。

「うん!」

私はさも当然と言った顔であけてくれたベッドに滑り込む。
入ったのを確認するとレンは毛布を下げる。

私はぴとっとレンにくっついてその少し高めの体温を楽しむ。
冷えた身体にその温もりはとても嬉しい。そして聞こえてくるレンの心臓の音。

とく とく とく・・・

世界で一番安心する音。

レンはもうすでに眠りの世界に戻っているようで、わずかな寝息が聞こえる。
私も引き寄せられるように船を漕ぎ出す。

外では雨がパラパラと穏やかな音をたてて降っている。