大人な鏡音の話です(性描写有)。そういうのが苦手な人は戻るボタン推奨。
カチャリと音がしてドアが静かに開く。
廊下の光源が薄暗い照明の部屋に鋭く差し込む。
「あら、もう寝るの?」
「もうって、真夜中なんですけど…」
ベッド脇のサイドテーブルに読みかけの本を置くと、レンは身を起こす。
時計が指す時刻は草木も眠る、という時間帯だ。
「ただいま」
「お帰り、遅かったね」
ドアを閉め、レンの隣に滑り込んだリンを抱きしめる。
ふわりと甘い香りが立つ。
「うん、今日でひと段落したから。しばらくはゆっくりできそう」
ここ数日リンはPV付の曲の収録でなかなか忙しい日々を送っていた。
晴れやかな笑みを浮かべているリンの顔は、薄暗い中でもはっきりとわかるほど化粧をしている。
「化粧濃いよ…」
「えー、他に見るとこあるでしょ!?」
レンの言葉にリンの眉が不機嫌そうに顰められる。
「いや、まあ気付いてたけど。どうしたのそのドレス」
「ふふっ、似合うでしょ?」
立ち上がったリンは見せ付けるように、くるりとその場で一回転する。
ドレスの裾と一緒に長い髪も一緒に翻った。
「似合うよ。今回の衣装?」
「そう、気に入ったから着てきちゃった」
「いいの?」
「たぶん」
果たして本当に大丈夫なのだろうか。そう思いながらも、もう一度レンはリンを見る。
肩がむき出しの黒いドレスは、胸元は艶やかなビーズの刺繍があしらわれ、
ロングスカートは太ももからスリットが入り、そこから覗く白い肌とのコントラストが色っぽく映る。
ほんの数年前だったらこんな大人っぽいデザインのものは似合わなかっただろう。
ここ2、3年で一気に伸びた手足はレンと違って丸みを帯び、リンをすっかり女性らし
い身体つきへと変えてしまった。
お陰でこんな刺激的な衣装もすんなりと着こなしてみせる。
「ねえ、レン」
スプリングがギシリと軋み、リンがレンの側に腰を下ろす。
「何?」
問いかけた唇を唇がふさいだ。
啄ばむようなキスの後、少し挑戦的なリンの瞳と瞳がぶつかる。
自分と同じ青い色。
リンの唇が残したやたらと甘いグロスを舐めると、その華奢な腰を抱えてベッドに引きずり込む。
白いシーツの上にリンの髪が扇のように広がる。
混じりっけのない蜂蜜のようなその色は、サイドテーブルのスタンドが発する光によって普段より濃く映る。
「レン」
熱を帯びた手に両頬を挟まれると、レンは唇の横にキスされた。
ゆっくりとその手がシャツの裾をめくると、素肌にリンの手が触れる。
愛撫するように手が背中や腰を行き来する。
筋肉質のレンの身体はおそろしいほど、自分の手によく馴染む、とリンは思った。
手はどんどん上に伸ばされ、胸や肩甲骨の辺りを撫で回す。
そしてシャツを脱ぐように促す。
「今日はやけに積極的じゃない?」
「そうかしら」
上半身裸になったレンがそう言うと、組み敷かれたリンは目を細めながら見上げてくる。
負けじとレンもむき出しの肩や鎖骨を撫でたり、口付けたりする。
そうしながら背中に手を回し、ドレスのファスナーを引きずりおろす。
緩まったドレスの胸元から、ドレスと同色のブラジャーがのぞく。肩紐のないシンプルなタイプだ。
さらにホックの位置を探り当てるとパチンとそれを外す。
リンから抗議の声が上がるが、唇でふさぐ。
舌をつかって歯列をなぞれば、おずおずと口が開き、しかしすぐ誘うよにリンの舌がレンの舌を導く。
「んぅ、ふっ…」
唇の隙間から漏れる水音と甘い吐息が室内に響く。
キスの間目をつむっていたリンの目が開く。薄っすらと涙の膜が張ったきれいな瞳。
それが合図かのようにレンは唇を離すと、そっと胸のほうに唇を這わす。
膨らんだ乳房を両手で持ち上げるように揉みながら、赤い頂点をつつくように舐めるとリンの身体がビクリと跳ねた。
その反応が好きでレンは何度も何度もくり返す。
そのたびにリンの身体はいじらしい程反応する。
気持ちいいけれど、物足りない。
そんなギリギリの感覚に痺れを切らしたリンは、レンの腰に手を掛けるとズボンを器用に引きずり落とす。
そして下着の上からでもはっきりと判るそれを、優しく握る。
一瞬だけレンの眉間に皺が寄る。
もちろんリンはその表情を見逃さず、布越しに更なる愛撫を施し始める。
それからスルリと下着の中に手を忍び込ませた。
「んっ…リ、ンっ」
今度はレンの身体が跳ねた。吐く息には熱がこもっている。
苦悩な表情には自分にはない色気があるな、とリンは常々思っていた。
特にこんなときの表情はとりわけ色っぽい。昔は同じような顔だったのに、今じゃまったくの別物。男と女だ。
「あっ…んぅ!」
いつの間にかドレスの裾をめくられ、レンの指が下着の上から秘部を強めになぞる。
その刺激にリンは思わず手を離し、シーツを掴む。
「着たままってなんかエロイね」
「ヘンタイ」
「オレのことは脱がしておいて?」
あっという間に取り払われた下着が膝の辺りでぐずつく。
自分の分はさっさと取り払い投げ出してしまう。
そしてレンはぎゅうっとリンに抱きつくと、リンは腕を伸ばしその頭部を抱え込む。
再び見つめ合う形になり、どちらともなく口付けた。
温かくやわらかい舌からつたう体液はもうどちらのものかなんて判らない。
ゆっくりとリンの足が腹部に引き寄せられ、その中心にレンが腰を落としていく。
大して触れていないのに、リンのそこは溢れるほどの愛液で濡れそぼっている。
「レっ…んっ」
最奥まで辿りつくとレンは腰を少しずつ動かし始める。
ゆるゆると味わうかのような動きに焦れたリンが、レンの背に足を絡める。
「ねぇ、レンっ、もっと…」
「もっと、…こう?」
「あっ…んぁ、あ、あぁっ」
レンが腰の動きを早めるとリンの指先に力が篭められる。
引いては寄せる波のように、そう言うとまるで崇高なことのようだけど、実際はそんなものではない。
それでもとても甘美な行為。
もう何度となくしてるいるのに、その度にお互い快感に思考が侵されていく。
「ねっ、レ、ン…」
「んっ、…な、に?」
「イこうよ」
一緒に、と告げた口をふさぐ。
加速していく快感。途切れ途切れになる思考回路。
互いの熱い身体を抱き止めながら、天頂へと昇りつめる―――。