スキスキス
女の子って占いが好きだよなってつくづく思う。
朝のニュースの星占いに一喜一憂して、雑誌に載ってる血液型やら動物占いやらのページを穴があくんじゃないかってくらい熱中して読むし。
リンやミク姉ならまだわかるけど、メイコ姉も意外に好きみたいだからやっぱり女の子は占いが好きな生き物なんだ。
男のオレやカイト兄にはよくわからない感情だから、そんな様子を見ていつも呆れてものが言えない状況だったりする。
今だってリンは雑誌の占いページを必死になって読んでいる。
くだらないなーとは思うけど、そんなことを口にしたら何倍返しされるかわからないから黙っているけど。
「ねーレンあたし達の誕生日の花はザクロで成熟した美を秘めてるんだって!」
リンが急に顔を上げて嬉々として話しかけてきた。
当たってるよね〜、なんてリンは言ってるけど、どこが『成熟』した美なのか知りたいとこである。
そもそもザクロの花ってどんなだよ、オレはマーガレットと菊の花の区別だって怪しいところなんだ、と心の中で一人つっこむ。
「でね、ミク姉はー・・・ってレン聞いてる!?」
「えっ、あ、きいてる、聞いてる」
上の空だったのがバレてしまい、慌てて返事をしたがリンに訝しげな目で睨みつけられる。
「・・・花とか、占いとかよくわかんねーよ」
こうなったら開きなおってみせる。
「えーわかんないの??」
「うん。あんまり興味ないし」
「ふーん・・・」
リンは残念そうな顔をしてまた雑誌に戻って、しばらくパラリパラリとページを捲っていたが不意にパタンと雑誌を閉じてしまった。
そしておもむろにテーブルにある花瓶に活けてある花を一本掴む。
この花は最近ミク姉が土手にたくさん咲いてたからと摘んできた花だった。
何をするんだろう、とリンを眺めていると
「レンはリンのことが好き、」
そう言ってリンは花びらを一枚つまみ取る。
「嫌い、好き、嫌い・・・」
一言につき一枚。
薄桃色の花びらがヒラヒラと床に舞い落ちる。
「・・・好き、嫌い」
4回目の嫌いで花びらはなくなる。
計算すればどちらの言葉で終わるかなんて最初から分かりきっていることだったのに。
でもきっとそういう問題じゃないんだろう。
「あーあ、ちょっと残念」
リンは少し寂しそうな顔をして散らばった花びらを集める。
別にこんな占いでオレの気持ちが決め付けられたわけじゃないのに。
そう感じた瞬間、オレはリンの腕を掴んで引き寄せる。
リンの手から花びらひらひらとこぼれるのがわかった。
だけどそんなの気にしないでリンを抱き寄せて素早くキスをした。
自分と同じ色をした瞳が大きく見開かれる。
「スキの反対はキスだから」
我ながらクサイセリフだと思った。
だけどこんなことでリンの悲しそうな顔なんて見たくなかったし、リンのことが好きだから。
「スキ、キス・・・ほんとだ反対だね」
リンがふにゃりと笑う。
「うん、リン好きだよ」
そう言ってもう一回キスをする。
床に散らばった花びらが優しく揺れているのがわずかに見えた。