夏と花火と私と浴衣

今日は待ちに待った花火大会の日だ。
なぜこんなにも待ち遠しかったかとういと、ミクオと一緒に行く約束をしたからだ。
あれから何度か会ってはいるけど、こうやって約束をして会うのは初めてで、それだけで心が躍る。

せっかくの花火大会だもの、普段とは違う格好―――浴衣を着よう!
そう思ってしまってあった浴衣を箱から取り出す。

浴衣は2つあるけど、どっちにしょう。
白地に濃いピンクと薄い紫で小さな花が散りばめられたのと、紺地に赤い琉金がひらひらと描かれているもの。
白地のほうがかわいいけど、ちょっと子供っぽいかな、
紺地のほうはシックで素敵だけど、赤い琉金は私の髪の色と合わない気がする。
鏡の前で浴衣を合わせながら、うんうん悩む。
ミクオにあんまり子供っぽくみられたくないな・・・。
ふと、そんなことを考えてる自分がいた。

・・・やっぱり紺地のほうかな。
悩んだ末に紺地のものを着ることにした。
浴衣に腕を通そうとしたとき、コンコンとドアをノックする音がした。
ハーイ、返事とともにドアを開けるとそこにはリンちゃんが立っていた。

「ミク姉、お願い浴衣かして!!」

どうやらリンちゃんもレン君と一緒に花火大会に行くそうだ。
そこでレン君にあっと言わせたいために浴衣を着たいらしい。
その気持ちはよくわかる。
女の子だもん。
好きな人にはかわいいって思われたい。

「ミク姉も誰かと花火大会に行くの?」
「え、あっ、うん。・・・友達とね」

友達―――。なのかな?ミクオと私の関係はなんていうのだろう。
とりあえずミクオのことは伏せておく。
男友達だって知ったらカイトお兄ちゃんがどうかしてしまうかもしれないし。

「どっちの浴衣がいい?」
リンちゃんに2つの浴衣を見せる。
「ミク姉が着ないほうでいいよ。急に言いだしたの私だし」

そう言ってるリンちゃんの目は明らかに紺地の浴衣を見ていた。
ちょっとリンちゃんには大人っぽいデザインな気がする。

ああ、きっとリンちゃんも私と同じで、レン君に普段と違うところを見せたいのだ。

それなら、
「じゃあ、私白いの着るつもりだったからリンちゃんは紺色ほうね」
リンちゃんの目がパァァッと輝く。なんだか私も嬉しくなる。

「せっかくだし髪型も変えて、お化粧もしょう」
浴衣を着ながら私が提案する。

「私、お化粧したことないよ・・・」
「大丈夫、教えてあげるから レン君をあっと言わせよう」

リンちゃんは顔を少し赤らめる。

「レン、似合うって言ってくれるかな・・・?」
少し不安そうな声。
初々しくって、普段の元気なリンちゃんとは全然ちがう。

「言ってくれるよ!」
笑顔で答えればリンちゃんもつられて笑顔になる。

「でも、きっとレン、今日が花火大会だってこと忘れてそう」
そう言ったリンちゃんの顔は苦笑気味でとてもかわいかった。

ミクオは覚えてるかな?
彼のことだ忘れてることはまずないだろう。

それじゃあ、浴衣を着た私を見てどんな反応をするだろう。

言ってくれるかな、

かわいいって。

少し不安もあるけれど、
今から彼に会ったときの反応が楽しみだ。